第3章 胸を突き刺すドロローソ【執行~あの場所】
「残念。こっちはカウンター前提で動きを作っとんのや」
そのまま放り投げるように壁に激突する。
「クソッ」
悪態を吐いていると、腹部から流れる大量の血液に目を見開いた。
「キミ、しつこいから使わせてもろたで――得物。ホンマは星也君と戦うまで温存しときたかったんやけどなぁ」
ニヤリと星也を一瞥すると、彼は一つため息を吐く。
「そろそろ終わりそうですか? 待つだけなのも退屈なんですけど」
「自分、案外せっかちやな。もうちょい待っとれ」
懐から取り出した懐紙で己の得物――小刀の血を丹念に拭って捨てた。
「【赤血操術】やし、止血はお手のもんやろ。止血に気ぃ回しながら どこまでやれるか試してみよか」
「用意がいいな」
そう言ってやると、直哉は「内緒やで」と血を拭った小刀を懐に仕舞う。
「ぶっちゃけダサいと思っとんねん、術師が得物 持ち歩くの。それがないと勝たれへんってことやし、意外とおんで、同(おんな)し考えのヤツ。オレの兄さん方もブラブラとみっともないねん。よぉアレで甚爾君のことやいやい言えたもんや」
「嫌いなんだな、兄弟が」
「嫌いやね」
きっぱりと、直哉は断言して嘲笑した。
「弟よりデキの悪い兄なんか、居る意味ないやろ。首 括って死んだらえぇねん」
「その兄弟たちのおかげで、今のオマエがあるかもしれんぞ」
そう言うと、直哉は「は?」と不愉快そうに顔を顰めた。
「今、めっっちゃキショいこと言うた? ドン引きやわ」
「デキが良かろうと悪かろうと、兄は弟の手本なんだ」
兄が道を誤ったのなら、弟はその道を避ければいい。兄が正道(せいどう)を歩んだのなら、弟は後をついて来ればいい。
弟たちのために道を作る――それこそ、兄が兄たる所以であり、弟たちの先を行く理由だ。