第3章 胸を突き刺すドロローソ【執行~あの場所】
「――意識が、刀にいきすぎ」
乙骨の刃がナイフの付け根へ滑るように移動し、そこを打ちつけられた。
衝撃でナイフが跳ね上げられ、さらに腹に蹴りをもらう。ただの蹴り……頑丈さには自信がある虎杖だったが、あまりの重さに思わず咳込んだ。
乙骨が刀を大きく振り上げる。どうにか体勢を整え、虎杖は刀を受け止めるべくナイフを構えた。
――バスッ!
ナイフごと、虎杖の身体に斬撃が走る。鋭い痛み――だが、ここで止まるわけにはいかない。
振り下ろされた乙骨の刀をガゴッと踏みつけて地面に固定し、回し蹴りで刃をへし折った。
驚いたのか、乙骨は飛び退くように距離をとってきた。
「折られた……まぁ、そうだよね。五条先生の教え子だもん。星也さんにも気をつけるようには言われてたし……やっぱ一筋縄じゃいかないか」
焦った様子もなく、乙骨は冷めた目で半ばほど折れた刀を見つめる。
虎杖はサッと自分の身体を確認した。斬られた傷は深い……が、内臓が出たわけではない。
それに、これで自分も乙骨も丸腰だ。
虎杖は腰を落とし、両手を握って拳を構え、乙骨と距離を詰めにかかる。そこへ、突如 眼前に巨大な手が現れた。
『なに してるのォ?』
虎杖はサッと顔を青ざめさせる。
「遊んでるだけだよ、リカちゃん」
場違いなほど優しい声音。底の見えない暗闇から顔と腕だけを出して現れた、リカと呼ばれる呪霊にも似た異形――式神なのか⁉
虎杖の腕力を持ってしても抜け出せない拘束に焦りが募っていく。
「押さえててね」
同時に折れた刀の切っ先が虎杖の心臓を貫く。
諦め、解放、安堵……様々な複雑な感情が混ざり合い、思考が停止した。
――「しっかり殺してくれ」
星也の言葉が、冷たい視線が脳裏に蘇る。
「ごめんね、虎杖くん」
その言葉を最後に――……虎杖の意識は途絶えた。
* * *