第3章 胸を突き刺すドロローソ【執行~あの場所】
「でも、五条先生には【六眼】があるから、術式を発動したときの呪力消費が限りなくゼロなんだ」
パフォーマンスではやはり五条が一番。乙骨に呪力切れはあっても、五条にはそれがないらしい。
「逆に、星也さんは術式の呪力消費が大きいけど、その分 戦い方を知ってる。術式のバリエーションが多い分、相手に合わせた戦法がとれる。短期決戦に持ち込まれたら結構 厳しいかな」
――話は終わり。
チャキ…と刀の切っ先が向けられる。立ち昇る呪力の圧倒的な気配に一瞬 息を呑んだ瞬間――乙骨が猛スピードで接近し、すでに眼前に迫っていた。
前に交流会で、東堂が言っていたことを思い出す。
一流の術師ほど、虎杖とは別の理由で、呪力の流れが読みづらいと。
それは、一流ほど呪力操作の精度が高いため、直前までの攻撃が予測できないのだ。
だから、例えば 三流であれば右から攻撃がくると呪力で読めても、相手が一流であればそれが呪力から読めず、動きから判断するしかない。
しかし、乙骨は刀を含め、全身から常に呪力が立ち昇っていた。動きを読む読まない以前の問題。全ての攻撃が決定打になり得るし、全てのダメージも最小限を抑えられる。
――「……悠仁。君はもう、呪術師なんだ」
――「憂太も頼んだよ、悠仁の処刑―― “しっかり殺してくれ”」
星也の冷たい夜色の瞳を思い出し、「クソッ!」と奥歯を噛み締めた。
――星也さん……どうしてっ⁉
俺が【宿儺の器】だから⁉
たくさん人を殺したから⁉
それでも……それでも俺は人を救うんだ!
殺してしまった命を償うために!
一つでも多くの命を‼
だから……! だから……‼︎
「まだ死ぬわけにはいかねぇんだよ」
振り下ろされた斬撃を避ける。さらに斬り返された刃が頬を掠めた。
まずは刀をどうにかしなければ。
呪力で強化さえしていれば、刃物を怖いと思ったことはない。だが、乙骨相手にそんなことを言っていたら、あっという間に殺されてしまう。