第3章 胸を突き刺すドロローソ【執行~あの場所】
「いいですよ。じゃあ、そちらは任せます。虎杖くんと仲が良さそうな彼も一緒にいいですか? 邪魔されたくないんで」
「あぁ、分かった。憂太も頼んだよ、悠仁の処刑―― “しっかり殺してくれ”」
ハッと息を呑む虎杖に、脹相が再び耳打ちしてくる。
「(昨日の地点で落ち合うぞ)」
「(……あ、あぁ……)」
何かを振り切るように、虎杖は地面を強く蹴った。走り出した虎杖の背後から乙骨が追いかけてきて、すぐに並走される。
速い! 抜き身の刀を持ってこのスピード‼
そこへ、前方を横転した自動車が道を塞いでいた。跳躍して躱した虎杖に、素早く回り込んだ乙骨が刀を構える。
斬り上げた乙骨に、虎杖は自動車のドアの縁を掴み、その反動で後方に飛び退いた。
「絶対に斬ったと思ったのに……真希さんみたいだ」
虎杖は足を踏みしめ、自動車を掴んで乙骨にぶつける。ゴンッと直撃したが、倒せてはいないだろう。
見通しのいいところでは彼から逃げ切ることはできない。今のうちに屋内へ逃げ込もう。
そう思って駆け出した虎杖の背後から、先ほど自分が投げた自動車が上空から降ってきた。
とっさに足でブレーキをかけて踏み止まると、轟音を立てて虎杖の眼前に落ちる。
「驚いた? パワータイプに見えないもんね。実際 非力な方だし」
確かに彼の言う通り、自動車を投げられるようには見えない。だが、パワーがなくても、とんでもない呪力量だ。
パワー不足を呪力強化で補うのは誰でもやっていることだが、彼がやると……。
「俺と真逆だな」
「……そう。五条先生や星也さんより多いんだよ、呪力量」
「いっ⁉ マジか」
あの二人だって普通よりも桁違いの呪力を持っているのに、それより上……ほとんど底なしではないか。
確か詞織も詩音の影響で膨大な呪力量があるが、ここまでの圧力は感じない。