第2章 ぎこちなく響くアン・フェール【禪院家/狩人】
「オレが用あんのは恵君やから、ぶっちゃけキミの生死はどうでもえぇねん。でも、ちょこまか されんのもアレやし、とりあえず足でも折っといたろうかな」
さっきから恵君 恵君って、コイツ何なんだ? 伏黒と知り合いか?
だが、あまり友好的な気配は感じられない。
「伏黒に何の用だよ?」
尋ねると、男は口角を上げ、歪んだ笑みを浮かべて見下ろしてきた。
「死んでもらお思て。その前に一筆 書いてくれると助かるんやけどなぁ」
男の言葉に、全身が沸騰しそうなほどの怒りを感じる。だが、仕掛けるより早く、男は音もなく高架下に降りて来ていた。
速い……!
「恵君、キミを探してるんやって。たぶん、詞織ちゃんも一緒やろ。前から狙っててん。『神ノ原の血』。恵君 殺すついでに、詞織ちゃんも貰おかな。憑いとる呪霊も、“縛り”解かんかったらただのザコやし」
コイツ……!
拳を握りしめて打ち出そうとするが、男の攻撃は虎杖よりも速かった。脹相も応戦してくれるが、全て捌ききられる。
さらに追撃しようと脹相と共に殴りかかるが、そこに男はおらず、反対側の車線へ移動していた。
「速いっちゃ速いんだけど……何か変な感じだな」
「術式だろうな」
なるほど、と脹相の言葉に内心で頷くと、男はジッとこちらを見据えてくる。
「思ったよりやりよるんやね。正直 ナメてたわ――……もうちょい、速うしてみるか」
瞬間――ぬるっと纏わりつくような悍ましい呪力に、全員が息を呑んだ。
まるで五条や星也に感じるような……いや、違う。もっと不気味な気配。
バッと気配の方向を見ると、近くのビルに二つの人影が見える。
……星也の呪力の気配は確かにあるが……もう一つのこの不気味な呪力は……。
「……誰だ?」
呟いた虎杖の声が不気味な呪力を乗せた風に溶けた。
* * *