第2章 ぎこちなく響くアン・フェール【禪院家/狩人】
「何度でも言うさ。思い出せ。あったはずだ。オマエの父の額にも、縫い目が」
脹相の言葉で遠い昔の記憶が呼び覚まされそうになったところに、ジャリを踏む音が耳に届く。
「恵君、おらんやん」
声の方を見上げれば、陸橋の上に金髪の男が立っていた。袴と洋服を合わせた和洋折衷な出立ちで、関西訛りの男はキョロキョロしている。
「オレが一番乗り? そんなことあんの? トロすぎへん?」
誰だコイツ? 恵って……伏黒の話をしたのか?
警戒しながら身構えていると、男の視線がこちらを向き、呆れたように息を吐く。
「キミらも何してん? 目立ちすぎやで。逃げる気ないん?」
「逃げる?」
「何や、知らんのか。キミ、死刑やって。悟君の後ろ盾がのうなったから」
虎杖の後ろで脹相が「あ"ん?」と殺気立った。
――「五条サンが利かせてた融通(ワガママ)で救われていた術師が数多くいる」
そう、猪野が言っていたことを思い出す。
だから自分も、死刑執行猶予がなくなったのか。
「じゃあ、詞織は? 詞織は大丈夫なのか⁉︎」
確か、彼女も五条に救われていた『数多くの術師』のうちの一人のはずだ。
「詞織? あぁ、恵君と仲良しの詞織ちゃんな。そっちの話は聞かんし、今はキミと渋谷で手一杯なんやろ」
ひとまずホッとしていると、「人の心配してるヒマないんちゃうん?」と男は肩を竦める。