第2章 ぎこちなく響くアン・フェール【禪院家/狩人】
橋の上で、虎杖は大きくパンッと手を鳴らした。さらにパンッパンッパンッと手を鳴らし続ける。
やがて、轟音と水飛沫を上げながら、川から二体の巨大な呪霊が現れた。
「出たな」
雨のように降る水を浴びながら、虎杖は振り返る。勢いよく橋へ上がってきた呪霊を避け、虎杖は橋の上を走った。そこへ、空中から別の呪霊が合流し、さらに四肢を持った呪霊が進行を妨げるように降り立つ。
虎杖はとっさに、呪霊の足の間をスライディングするように通りすぎ、前方にある陸橋の高架下トンネルの中の狭い空間へ誘導した。
「脹相!」
トンネルの出口で待ち構えていた脹相が腕を構え、こちらを見据えている。
「【穿血】」
一直線に放たれた血液がレーザービームのように放たれ、呪霊を貫いた。消滅する呪霊たちの中で、射線から逃れた呪霊が飛び出す。
「悠仁」
呼ばれるまでもなく、虎杖は呪霊を殴りつけた。呪霊の身体が歪み、壁に亀裂が入る。奇声を上げて消滅していく呪霊を前に感慨などなく、虎杖は大きく肩を回した。
虎杖の戦いは凄まじく、脹相戦でのパワフルな戦いに繊細さが加わっていた。
さらに澱みない呪力操作だけでなく、膂力も桁違いに上がっている。
その姿は――正に鬼神。
「まだ本調子じゃねぇな」
グッパッと手を握っては開きを繰り返し、虎杖はため息を吐く。
「全快していなくて この凄まじさ……さすが俺の弟だ」
「まだ言ってんの?」
呆れた声でそう言うが、脹相の表情は至って真面目だった。