第2章 ぎこちなく響くアン・フェール【禪院家/狩人】
「これはあたしの見立てだが、五分五分ってところだな」
まず、血筋は悪くない。壊滅したとはいえ、詞織は名門の血を引いている。
加えて、神ノ原一門の相伝【陰陽術式】は、どの家も欲しがるチート術式だ。もし伏黒が詞織と結婚すれば、【陰陽術式】を血筋に取り込むことができる。禪院家もノーとは言わないだろう。
「問題があるとすれば……」
「……詞織が特級被呪者だってことですか」
真希の言葉の先を引き継ぐと、彼女は「だな」と小さく肯定した。
「ただ、詩音も相伝を継いでる。ここは意見が分かれるところだろうが……詩音の場合は憂太の里香と違って、“縛り”による抑制を受けてる。上手くやれば総監部みたいに監視程度で留められるかもしれねぇし、そうでなくとも祓って解決できるだろ」
詩音を祓う……それは自分の目標でもあるだろう。それなのに、なんだ この胸くそ悪さは。
「だが、子ができない、もしくは術式を持つ子が生まれなかった場合は話が変わってくる。そこは自分で解決しろ」
ニヤリ、と真希は意地悪そうに口角を上げたが、次には「だが」と真面目な顔に切り替える。
「柵(しがらみ)は多いが、腐っても御三家の一角。影響力は強い。無駄にはならねぇだろ」
そうだ。力さえあれば詞織を守れる。
五条の後ろ盾を失った今、詞織の立場も危うい。
今は虎杖や渋谷事変に目が向いていて詞織について言及されていないが、いつ矛先が向くかは分からない。
それも、自分が禪院家の当主になれば、わずかでも後ろ盾になってやれるはず。
「恵」
不意に名前を呼ばれ、伏黒は真希の示す先へ視線を向ける。そこには、詞織が夜色の瞳に微かな戸惑いを宿しながら立っていた。