第2章 ぎこちなく響くアン・フェール【禪院家/狩人】
「……まだ、あたしじゃダメなんだよ。あたしじゃ、真依の居場所は作ってやれない」
その言葉に、真希と真依の生い立ちを思い出す。
二人は一卵性の双子として禪院家に生まれ、片や【天与呪縛】により呪霊すら視認できず、片や術式を持ちながらも呪力が乏しい。
そんな姉妹が実力主義のあの家でどういう扱いを受けてきたのか、想像に難くない。
詞織と詩音も……そうだった。
「……一つ、確認させてください」
そう前置きすると、「何だ?」と真希が見上げてくる。
「当主になった場合、結婚ってどうなるんですか? 後継ぎ問題とかありますよね?」
「は? あぁ、詞織のことか。まぁ、そうだな。直毘人も正室とは別に愛人がいるし、相伝の術式を継いでる直哉も、バカみたいに兄弟がいる」
そりゃあ、そうだろう。
御三家ともなれば相伝の術式を継いだ子が必要だし、そうでなくても優秀な子を欲しがるもの。
特に術師は死と隣り合わせ。いつ自分や我が子が命を落とすともしれない。そのためにも、子はいくらだって必要だろう。
「じゃあ、はっきり聞きます。当主になった場合、俺は詞織を嫁にとれますか?」
もしできないと言うのなら、この話はここで終わりだ。
いくら真希の頼みでも、この先の状況が有利になるとしても……詞織を嫁にできないのであれば話にならない。
真希はしばらく伏黒を見つめ、深くため息を吐いた。