第2章 ぎこちなく響くアン・フェール【禪院家/狩人】
「……って、わけだ」
「はぁ⁉︎ 禪院家当主⁉︎ 俺が⁉︎」
病院の待合スペースに移動し、椅子に腰を掛けた真希から聞かされ、伏黒は思わず声を上げた。
死亡した禪院 直毘人による遺言。
寝耳に水。まさに降って湧いたような話に、伏黒は混乱する。
とりあえず……。
「お断りします。面倒くさい」
確かに自分の父親は禪院家の人間らしいが、伏黒自身は自分を禪院家の人間だとは一ミリも考えていない。
全く関係のない話。
当主死亡のゴタゴタに巻き込まないでもらいたい。
「いや、悪いが受けてくれ」
真希の話によれば、伏黒“には”禪院家の財産の全てを譲る旨を直毘人は遺言状に記載していた。当然、そこには金や呪具も含まれる。
さらに、伏黒が当主になれば、御三家や総監部の情報も入ってくるため、これからの立ち回りも変わってくるだろう……と。
「だったら、真希さんがやってくださいよ。譲るんで。あ、一筆 書きますか?」
「今のあたしじゃ誰も納得しねぇし、ついて来ねぇよ」
そう言って、真希はこちらを指さしてきた。
「相伝の術式を継いでること! 領域を会得してること! 悟に目をかけられてたドラが乗った恵でギリだ‼︎」
つけ加えるなら、神ノ原一門当主に弟同然に可愛がられていることもポイントが高いらしい。
神ノ原一門自体に権力はほぼないが、【陰陽術式】は呪術界でも警戒されている。その上 本人は特級術師で、現代最強・五条 悟の懐刀の一つと噂されるほどだ。
神ノ原一門に権力はなくても、星也本人にはそれなりの影響力があるらしい。
「納得とか……禪院家の人がどう思おうが関係なくないですか? マジでやりたくないんですけど。さっき言ってた恩恵は、当主になりさえすれば受けられるでしょ」
渋い顔でそう意見すると、真希は椅子に背を預け、自分の手のひらを見つめる。