第2章 ぎこちなく響くアン・フェール【禪院家/狩人】
「パパが死んでんねんで。堪忍したってや」
そこへ、タイミングを見計らったように、「失礼します」と障子が開かれた。
「皆さん、お揃いで」
女中に案内され、眼鏡をかけた背の低いスーツの男が頭を下げて入って来る。
「この度はお悔やみ申し上げます。禪院家当主 禪院 直毘人様のご遺言状は、このフルダテがお預かりしております」
遺言状は当主である直毘人の遺志により、禪院 扇、甚壱、直哉の三名が揃ってから、執行人であるフルダテより伝えるよう指示されているらしい。
「相違なければ読み上げます」
女中が用意した座布団に正座し、フルダテは直哉たちが着席するのを待って、取り出した遺言状を読み上げ始めた。
一つ、禪院家二十七代目当主を禪院 直哉とする。
一つ、高専忌庫及び禪院家忌庫に保管されている呪具を含めた全財産を直哉が相続し、禪院 扇、禪院 甚壱のいずれかの承認を得た上で直哉が運用することとす。
「まぁ、えぇか」
いちいち許可がいるのか。面倒くさいな。
そう思っていると、フルダテは「ただし」と先を続ける。
「なんらかの理由で五条 悟が死亡、または意思能力を喪失した場合、伏黒 甚爾との誓約状を履行し、伏黒 恵を禪院家に迎え、同人を禪院家の当主とし、全財産を譲るものとする」
――あ?
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「やっぱアカンわ。タマなしや、あの二人。よぉ知らんガキが当主になっても、オレよりマシやと何もせん気や」
まるで何かの冗談かのような遺言状が開示され、直哉は叔母を振り返った。
「恵君は今どこで何してんの?」
「詳しくは……ただ、東京ではほとんどの術師が虎杖 悠仁捜索の任に当たっているそうですので、おそらく」
「誰やねん、虎杖 悠仁って」
「例の【宿儺の器】です」
あぁ、はいはい。
特級呪物を呑み込んだキショい阿呆か。
「じゃあ、上の人に伝えとき。禪院 直哉が【宿儺の器】殺したるって」
伏黒も【宿儺の器】のところにいるのだろう。ならば、二人まとめて殺してやる。
今の東京は魔境だ。人がいつ、どう死んでも関係ない。殺してしまえば、後のことはどうとでもなる。
「――禪院家当主は、オレや」
* * *