第2章 ぎこちなく響くアン・フェール【禪院家/狩人】
「で、死んだん? 真依ちゃん」
――特別一級術師 禪院 直哉
木造の邸の廊下を歩きながら、後ろをついてくる叔母を振り返る。
「死にかけているのは真希の方です」
「そうなん? ほな えぇわ」
クックッと喉を鳴らして笑う直哉に、叔母――真希と真依の母は小言や皮肉を返すことすらしなかった。
美人だが真希は男を立てられない。三歩 後ろを歩けない女は死んだ方がいい。
逆に真依は真希と顔も身体つきも同じで、強がっているが自分が女だと理解している。
どちらか選べと言われたら真依だろう。タイプではないが。
障子を開けて部屋に入ると、自分とは別に呼び出しを受けていた二人はすでに到着していた。
長い髪を高い位置で束ねた、痩身の壮年の男性。もう一人は、額に大きな傷のある、筋肉質で野性的な風貌の男性である。
「何をしていた?」
――特別一級術師 禪院 扇
「…………」
――特別一級術師 禪院 甚壱
二人は直哉にとって、扇は叔父、甚壱は従兄だ。
「実の父親が死んだというのに……」
苦言を呈してくる叔父に、「ごめんちゃい♡」と手を合わせて眉を下げる。
「でも、別にえぇやろ。オレが来ても来やんでも、次の禪院家の当主はオレなんやから。オレの兄さん方は皆 ポンコツやし、当主の弟の扇オジさんもパッとせぇへん。その娘の真希ちゃん、真依ちゃんは論外。甚壱君はなぁ……顔がアカンわ。甚爾君と逆やったらよかったのにな」
禪院 甚爾――甚壱の弟で、【天与呪縛】により呪力を全く持たない、最強のフィジカルギフテッドだ。
直哉の煽りにキレたのか。
拳を振るって襲いかかってきた従兄の攻撃を、直哉は術式を使って躱した。だが、躱した先で扇に刀の切っ先をつきつけられる。