第2章 ぎこちなく響くアン・フェール【禪院家/狩人】
「お兄ちゃん? ユージって兄弟いたっけ?」
「一人っ子だろ。つーか、渋谷に来たメンツで加茂さん以外に【赤血操術】使えるヤツがいんのか?」
両親はおらず、育ててくれた祖父も亡くして天涯孤独の身のはずだ。
それに、【赤血操術】も加茂家の相伝。
ならば、その虎杖の兄(自称)も加茂の知り合いか加茂家に連なる者? 全然 読めないな。
ただ、行き先の手がかりがない以上、探す範囲は広そうだ。【玉犬】には無理をさせるが、頑張ってもらうしかない。
「ありがとう、垂水さん」
「助かりました。ありがとうございます」
頭を下げると、彼はひらひらと手を振って出て行った。それを見送って、再び重たく息を吐き出す。
「メグ……」
「あぁ、とにかく虎杖を探そう」
「もう……わたしたちだけでどうにかできる事態じゃない……か……」
総監部の通達によれば、五条の封印を解くことも犯罪だが、そんなことは言っていられない。
詞織も気持ちは同じようで、異議を唱えることなく頷いた。
そこへ、再びコンコンッとノックが鳴る。
「真希さん、もういいんですか?」
ひどい火傷を負い、家入と星良の治療でどうにか一命を取り留めたところだった。
「真希さん、まだ休んでた方が……」
ててて…と真希に駆け寄り、詞織が痛ましげに真希の短くなった髪を撫で、火傷が痛々しい腕に触れた。
「大丈夫だ。それより、悪いが聞かせてもらった。恵、来い。話がある」
やんわりと詞織の手を解き、伏黒を呼ぶ。
詞織がいると都合が悪いのか?
「分かりました。詞織、ちょっと待ってろ」
柔らかな頬を撫で、名残惜しく思いながら詞織と離れ、伏黒は真希の後を追った。
* * *