第2章 ぎこちなく響くアン・フェール【禪院家/狩人】
「おい、それって……」
「まさか……津美紀……っ!」
ガタガタと震えて顔を青ざめさせる詞織を、「落ち着け」と抱きしめて宥める。
だが、内心では伏黒の心臓もバクバクと暴れ回り、冷や汗を流していた。それを、無理やりねじ伏せ、深く重たい息を吐き出す。
「他に知ってることは……?」
握りしめた手が震えるのをどうにか堪え、動揺を悟られないように声を出した。
「呪力の理解を深めるための殺し合いをさせるらしい。夏油厳選、千人の虎杖クンが悪意を持って放たれたレベルみたいだよ。ヤバイね」
他人事のように笑う垂水の声を遠くに感じる。
殺し合い――そんなものに津美紀が巻き込まれてしまうというのか。
どうにか……どうにかしなければ……っ!
「殺し合いなんて……始まるわけない。強要されたって、普通 人は人を殺さないでしょ。わたしと詩音も……」
詞織と詩音は互いを殺すように強要されたんだったな。
そう、詞織の言う通り。自分だって、たとえ相手が見ず知らずのヤツだったとしても、気に入らないヤツだったとしても、「殺せ」と言われて殺しはしない。
「ま、そこは色々と準備してるみたいだよ」
さて、と垂水は立ち上がった。
「話すことは話したし、もう行くよ」
病室の扉へ向かって行く垂水に、詞織が「ねぇ」と呼びかける。
「なんで、教えてくれたの?」
振り返ると、垂水はニッと得意げに口角を上げた。
「もちろん、点数稼ぎ。キミにいいトコ 見せたかっただけ」
「もう一つ」
去って行こうとする垂水を今度は伏黒が止める。
「虎杖はどうした?」
「さぁ? 【赤血操術】を使うお兄ちゃんがどっか連れてっちゃったからね」
垂水の話に、思わず伏黒は詞織と固まった。