夢幻泡影②【呪術廻戦(死滅回游〜)/伏黒 恵オチ】
第10章 ディスペラートの呼び声【裁き/東京第1結界】
「虎杖。オマエのような弱さを持つ人間が、まだまだいるのかもしれん」
身体を起こし、日車は虎杖を呼んだ。
「服を着ろ。そして 座れ」
倒れていた劇場の椅子を二脚立て、一つは虎杖に差し出す。
「――100点をやる」
そう言うと、虎杖はすぐに自分が投げ捨てた服を探しに行った。椅子に腰を下ろし、彼は拾ったパーカーやら学ランやらを着込む。
日車も椅子に座り、意味もなく床を見つめていた。
「虎杖、自分の意思で人を殺めたことはあるか?」
「……あるよ」
やはり、彼は言い訳をすることなく、ただあるがままを答える。
「……そうか」
虎杖のことだ。言葉を交わして一時間も経っていないが、だいたいの人となりは分かる。
裏表がなく、おおよそ人を騙すことに向かない。やってもいない罪を認めるくらいだ。命の重さを充分に理解している。
そんな人間が自分の意思で人を殺したのだ。
――「気に入らない奴をブチ殺したことはあるか? 気持ちがいいぞ」
「――最悪の気分だったろう」
血塗れで倒れる二人の男の死体を思い出し、日車は重苦しくそう言葉をかけた。
* * *