夢幻泡影②【呪術廻戦(死滅回游〜)/伏黒 恵オチ】
第10章 ディスペラートの呼び声【裁き/東京第1結界】
「コガネ、ルール追加だ。『泳者と泳者の点の受け渡し』を可能にしてくれ。もちろん これは、総則8の“変動”に含まれるものとする」
呼ばれて出てきた先端がカールした髭のあるコガネに日車が言う。その様子を、虎杖は緊張した面持ちで見ていた。
『承認されました』
〈総則〉
10.泳者は他泳者に任意の得点を譲渡することができる。
ホッと安堵の息を吐く。これで相手を殺すことなく点を得られるようになった。まずは第一歩だ。
「コガネ、俺の1点を虎杖へ」
『かしこまりました』
ポンッと虎杖のコガネが現れる。
『日車 寛見から1点が譲渡されました』
「これで、お互い十九日間は術式を剥奪されることはない」
今回のルール追加は、何も譲渡によって特点を増やすことに限らない。譲渡によって得点が減った側も変動も含まれ、総則8による術式の剥奪を免れるのだ。
「達者でな」
そう言って、日車が出口へと歩いていく。
「日車!」
虎杖の呼びかけに、彼は足を止めた。
「これからどうするつもりだ? アンタさえよければ、俺たちを手伝ってくれないか?」
術式が覚醒して十二日で あのレベルの強さだ。それに頭もいいはず。味方についてくれれば心強い。
それに……アンタは弁護士だ。
人のために戦える人間だろ。
けれど、日車は振り返ることなく息を吐いた。
「……余ったに点は、東京に来る前に殺した裁判官と検事のものだ。結界が開けたら自主でもするかな。それまでは、自分が何をすべきか考える」
それに、と日車は続ける。
「君といると、ますます自分を嫌いになりそうだ」
「え?」
「……すまない、君を責めたわけじゃないんだ」
またな、という言葉を残し、まるで心の扉を閉ざすように、日車は劇場の扉を出て行った。