第2章 ぎこちなく響くアン・フェール【禪院家/狩人】
「それって……一五〇年以上前の人でしょ。なんで……」
「加茂 憲倫も数ある名前の一つって話だし、肉体を乗り換える術式を持ってるみたいだよ」
肉体を乗り換える術式……それで夏油 傑を乗っ取ったというのか。それに、今の話の感じだと、一五〇年よりももっと昔から生きているのだろう。
「目的はなんですか?」
「呪力の最適化」
「呪力の最適化?」
思わずおうむ返しに聞き返してしまう。
「どういう意味?」と尋ねる詞織に、垂水は「さぁ?」と肩を竦めた。
「ただ、その目的のために天元様の結界に干渉して、非術師までも術師とする。そして……なんだっけ? 人類の可能性を模索してるっぽいこと言ってたかな?」
なんだ、それ。意味が分からない――が、それは垂水も同じだろう。ここはこれ以上 聞いても仕方がないか。
「そうだ。これからのことを話さないとね」
――【死滅回游】
垂水の話では、夏油はツギハギ呪霊――真人を取り込み、マーキング済の二種類の非術師に、遠隔で【無為転変】を施した。
虎杖のように呪物を取り込ませた者と、順平のように、術式を所持しているが脳の構造が非術師の者。
それぞれの脳を術師のものに変え、前者は器としての強度を、後者は術式を発揮する仕様を手に入れた。
そして、その封印が解かれ、マーキングの際に夏油の呪力に当てられて寝たきりになった者もいたが、じきに目を覚ますらしい。