第2章 ぎこちなく響くアン・フェール【禪院家/狩人】
「酷いなぁ。渋谷の状況も結構 変わったし、情報共有してあげようと思ったのに。ほら、キミたちの仲良しの虎杖クンのこととか……聞きたくない?」
「ユージと会ったの⁉」
伏黒の腕から顔を上げ、詞織が垂水へ身を乗り出す。そんな彼女に、垂水は「あれ?」と首を傾げてこちらへ歩み寄ってきた。
「いい顔だね。泣いてたの? 伏黒クンに泣かされちゃった?」
「触んな」
顎をクッと持ち上げ、垂水が詞織と視線を合わせてくる。その手をパンッと乱暴に払い、伏黒は詞織を抱きしめる腕に力を込めた。
「まぁ、いいや。ボク、最近はキミのお兄さんにも興味あるんだ」
「はぁ⁉」
「兄さまに?」
ベッドに腰を掛け、垂水が長い足を組む。
「とりあえず、話を進めようか」
「すっげぇ 後回しにしたくない話題だったけど……どうぞ」
無意識に渋い顔をしながら、伏黒は先を促した。
「じゃあ まず、虎杖クンは無事。宿儺に乗っ取られてたって話だったみたいだけど、その影響も抜けてたよ」
垂水の話に、伏黒は詞織とホッと安堵の息を吐く。
「……で、首謀者の夏油 傑。その夏油を乗っ取ってるヤツがいるって話は?」
「知ってる。メカ丸が教えてくれた」
メカ丸ね、と垂水が小さく呟いた。
「そ。で、夏油 傑を乗っ取っているのが、加茂 憲倫(のりとし)だ」
「かも、のりとし……」
「もちろん、加茂さんのことじゃないですよね?」
「そうだったら面白かったんだけどねぇ。残念ながら」
加茂家の汚点といまだ語り継がれる、史上最悪の術師。