夢幻泡影②【呪術廻戦(死滅回游〜)/伏黒 恵オチ】
第10章 ディスペラートの呼び声【裁き/東京第1結界】
「風呂?」
虎杖は劇場に入り、観客席の間を通ってステージへ近づく。スポットライトに照らされているのは、猫足のバスタブだ。そこには湯が張られ、男がスーツを着たまま浸かっていた。
「誰だ? そこで何をしている?」
「アンタこそ」
気怠げな問いかけに短く返す。
「君は服を着て風呂に入ったことがあるか?」
「ないな」
「思っていたより気持ちがいい。そうだ。俺は小学校の頃、着衣水泳の授業が好きだったんだ」
それは分かる。さすがに服を着たまま風呂に入ろうと思ったことはないが、着衣水泳の授業は虎杖も好きだった。
「最近 色々とどうでもよくなってな。やってはいけないと思い込んでいたことにチャレンジしているんだ。三十半ばを超えてグレてしまったわけだ。笑うか?」
「ちょっと面白い」
ぱしゃっと水音を立てて男が足を上げる。靴も履いたままなんだ。
やってはいけないと思い込んでいたことにチャレンジするのはいいが、そこで『服を着たまま風呂に入る』ということチョイスするのか。こんな状況じゃなかったら自分も隣にバスタブを持って来て参加するのに。
軽く息を吐いて頭を切り替え、虎杖は頭を切り替えた。