夢幻泡影②【呪術廻戦(死滅回游〜)/伏黒 恵オチ】
第10章 ディスペラートの呼び声【裁き/東京第1結界】
日車を探す虎杖を案内し、甘井は東京芸術劇場を訪れた。
「日車はここの劇場を拠点にしてる。移動してなければだけど」
「おおっ! マジで助かった! ありがとう‼」
「ちょ! ちょ、ちょっと待てって!」
軽快な足取りで躊躇なく中へ入って行こうとする虎杖を、甘井は慌てて止める。
「何?」
「マジで行くのか? せめて仲間と合流してからにした方が……」
話は道すがら軽く聞いている。虎杖は仲間と日車を探しに来ている。
相手は100点保持者だ。何をやるつもりなのかは知らないが、一人で立ち向かってどうにかできる相手ではないだろう。
「まぁ 確かに、仲間と合流したいところだけど、急ぎだからなぁ」
「……俺は日車に会ったことないけど、あの羽場さんが一度 コテンパンにやられたんだ」
「誰、羽場って? 強いヤツ?」
「オマエが倒したヘリ頭のヤツだよ」
ふーん、と軽く相槌を打った虎杖は、「じゃあ 大丈夫!」と口角を上げた。
「ヘリ頭に勝った俺も、逃げるくらいはできるってことだろ」
「うっ」
確かに、理屈ではそうかもれない。
――言え! 言うんだ、オレ……!
――もうこんなことやめよう……!
けれど、弱い心は虎杖を止めることなどできず――……。
手を振り、「そんじゃあな!」と満面の笑みで劇場に入っていく虎杖を見送ることしかできない。
――なんでアイツは……命を懸けてまで、あんなに一生懸命になれるんだよ……!
「……ごめん、虎杖」
その謝罪は虎杖に届くことなく、ただ宙を彷徨って消えただけだった。
結局オレは……あの頃と何も変わってない。
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