夢幻泡影②【呪術廻戦(死滅回游〜)/伏黒 恵オチ】
第10章 ディスペラートの呼び声【裁き/東京第1結界】
限られた予算と人数で動かなければならない弁護士側に対し、検察は税金と人海戦術で証拠を上げる。
それは別に構わない。そういう仕組みだ。
だが、二審で検察側から新規の証拠は提出されず、『行方不明者の犯行と疑う理由はない』と無茶な事実認定が下された。
三審の最高裁は狭き門で、上告はほぼ門前払い。まともに審理されることすら難しい。
この裁判は、初めから有罪ありきの――……。
――「嘘つき。無罪になるって言ったじゃないか!」
昔 無罪を勝ち取れなかった青年の悲痛の叫びが耳の奥で蘇る。
怒りと失望――大江の男を見る目は、そのときの青年と同じだった。
なぜだ。なぜ私をその目で見る。
「この判決に不服がある場合は、本日を含めて十五日以内に上告申立書を提出してください」
――カンッ! カンッ! カンッ!
ガベルの音が響く。けれど、鳴らしたのは裁判官ではなかった。
「全員 戻れ」
男は立ち上がり、暗く重たい呪力を立ち昇らせる。ガベルを振り上げる男の背後には、両の瞼を縫いけられ、両手に天秤をぶら下げた異形が現れた。
「――やり直しだ」
――【死滅回游 泳者】日車(ひぐるま) 寛見(ひろみ)
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