夢幻泡影②【呪術廻戦(死滅回游〜)/伏黒 恵オチ】
第10章 ディスペラートの呼び声【裁き/東京第1結界】
――「嘘つき。無罪になるって言ったじゃないか!」
怒りと失望で目を腫らし、その青年は憎しみや殺意すらこもった目で男を見た。
もちろん、無罪になるなどと言ってはいない。どうにか執行猶予がつくよう努力すると言ったのだ。
無理筋の刑事弁護――けれど、最も救済を求めているのは彼らだ。彼らは経済的にも精神的にも追い詰められている。弁護士に当たるのも無理はないだろう。
――自分は弱者救済を掲げているわけではない。
昔から、自分がおかしいと感じたことを放っておけない性分だった。それが治っていないだけ。
正義の女神は、法の下の平等のために目を塞ぎ、人々は保身のためならあらゆることに目を瞑る。そんな中で縋りついてきた手を振り払わないように――……。
――私だけは、目を開けていたい。
やがて、大江 圭太に裁判の判決が下された。
「主文。被告人は――無罪」
盗まれたものが大江の部屋に見当たらなかったことや、NPO内に犯行直後から行方不明者が出ていること。遺体から想定した犯行時刻に、コンビニの防犯カメラに大江が映っていたことが審理を有利に進めてくれた。
だが、まだだ。すぐに控訴をしてくる。
世論の批判はすごかった。『弁護士による買収』、『検察の怠慢』、『司法への不信』――けれど、男の心は揺らがなかった。
自分は自分の信じた道を進み、やるべきことをやった。ただ……それだけだ。
――「俺を信じてくれて、ありがとう」
まだ控訴され、二審を控えているというのに、大江は泣きながら男に礼を言った。
そして――……。
控訴審(二審)――有罪。無期懲役。
一審での無罪はみごとに覆った。