第2章 ぎこちなく響くアン・フェール【禪院家/狩人】
治療のために滞在している病院で、伏黒は詞織の病室を訪れていた。
「話、聞いたか?」
「……ん。聞いた」
呪術総監部より通達。
五条が夏油と渋谷事変の共同正犯なんてあり得ないし、夜蛾まで死罪認定。
そして、五条の後ろ盾を失った虎杖の死刑執行――それに乙骨が任命された。
「回復したら、虎杖を探して合流しよう。まずはそれからだ」
「…………」
握られた小さな拳が震えている。ギュッと寄せられた眉から、彼女が泣くのを堪えているとすぐに分かった。
「泣きたきゃ泣けよ」
「いい。泣きたいのはわたしじゃない」
相変わらず頑固だな。
「俺しか見てねぇ。見てほしくないなら、俺も見ない」
彼女の長い夜色の髪を耳にかけてやり、胸に抱く。すると、強張っていた力が抜け、肩を震わせて静かに涙を流す気配を感じた。
頼りない細い肩に愛しさが込み上げてくる。守りたいと思える、唯一無二の存在。
きっと、この先 戦いは苛烈さを極めるだろう。それでも、何を引き換えにしたって守り切ってみせる。
「あ、お邪魔だった?」
コンコンッと病室の扉がノックされた。
「分かってんなら邪魔しないでくださいよ、垂水さん」
軽薄な笑みを浮かべ、右手にギプスを嵌めた垂水 清貴がこちらを見ている。
泣いている詞織を見られたくなくて、庇うように抱き寄せ、伏黒は彼へ警戒した視線を向けた。