夢幻泡影②【呪術廻戦(死滅回游〜)/伏黒 恵オチ】
第9章 そして始まるアンシオーソ【結界/東京第1結界】
「ガッハッハッハッ! 拳が砕けたか! この勝負、おどれの負けじゃあ‼」
血だらけで叫ぶ男の腹に、虎杖は容赦ない回し蹴りを放つ。勢いよく吹き飛んだ男に、虎杖は血の流れる手をパタパタと振って見せた。
「別に砕けちゃいねぇよ」
痛みはあるけれど。
「……なぁ、日車って術師のこと聞きたいんだけど……」
起きて、と声を掛けるが完全に伸びている。身体を揺すっても起きないし、どうしたものか。
こういうのは、どのタイミングで聞くのが正解なんだ?
戦っているときは それなり真剣で こうして気絶させてしまうかもしれないし、戦い最中に聞いても応えてくれないだろう。
「い、虎杖」
不意に名前を呼ばれて振り返る。
「俺 知ってるぜ、日車ってヤツのこと」
虎杖の明けた穴から男が入ってきた。スタジャンを着た男は、気恥ずかしそうに頬を掻きながら手を挙げてくる。
「久しぶり。覚えてるか?」
「……誰だ?」
覚えているか いないかで言えば、覚えていない。
どうして こちらのことを知っているのだろうか。コガネで確認したのか?
いや、コガネが出す情報は名前だ。顔写真まではついていない。
ならば、本当に知り合いなのか? 顔と名前は割と憶えている方だと思うが……。
警戒していることに気づいたのか、男は「悪い」と謝ってくる。
「一方的に俺が知ってるだけだ。『西中の虎』は有名人だから」
「同じ地元の方でしたか!」
自分で名乗ったわけでもないのに、なぜ こんなダサい異名が広まってしまったのか。
やがて 虎杖は男について行き、日車の元へ向かう。