夢幻泡影②【呪術廻戦(死滅回游〜)/伏黒 恵オチ】
第9章 そして始まるアンシオーソ【結界/東京第1結界】
「日車という術師を知ってるか?」
「男って、女は殴ればなんでも言うこと聞くと思ってるよね」
「答えろ」
「はい、すみません」
苛立ちの滲む声で言うと、女は身を起こして座り、頬に指を当てて記憶を辿った。
「日車ってアイツでしょぉ? 100点 取ってる」
「どこにいるか分かるか?」
問いを重ねると、女は「……ふーん」と意味ありげに口角を上げる。
「なるほど、そういうことね。教えてあげてもいいけど、アタシのお願いも聞いて欲しいなぁ」
「……言ってみろ」
「言って? くだ……? 教えて? くだ……?」
耳に手を当てて茶化してくる女に「言え」と強めに要求すると、「はい」と大人しくなった。始めから 大人しく言うことを聞いてくれ。このやり取りが時間の無駄だ。
「アタシの“騎士(ナイト)”になって?」
「分かった。それでいい」
上目遣いで見上げてくる女に即答する。面倒くさいが、見返りが思ったより大したことなくて良かった。
「アタシって そんなイジリ代ない?」
「時間がないんだ。早くしろ」
呪具で先を歩けと示すと、女がぶつくさ言いながら腰を上げる。
「分かってんの⁉ 騎士って命懸けでアタシを守んのよ⁉」
「…………」
詞織なら全力で命を懸けるが、この女に懸ける命など持ち合わせていないのだが。