第2章 ぎこちなく響くアン・フェール【禪院家/狩人】
「あたしは一度 実家に戻るわ。コレを知ったところで真希は黙っちゃいないだろうし。呪具がなきゃ真希は戦えないもの。きっと禪院家に向かうはずだわ」
「やめなよ、真依ちゃん! そんなことしたら……っ!」
「平気よ。術式を持ってる分、あたしの方が真希よりいくらかマシ。桃はちゃんと傷を治してきて」
真依が微笑を浮かべるが、今の発言は強がりなのはすぐに分かった。禪院家での扱いは真依も真希も変わらない。
桃がさらに引き止めようとするも、有無を言わせない真依の様子に、言葉を呑み込むしかないようだった。
「私も一度 実家に戻ろう。何か情報を得られるかもしれない。垂水はどうする?」
「さぁ、どうしようかな。ま、おいおい考えるよ」
頭痛がするのか。垂水のマイペースさに、加茂はこめかみを押さえる。
「霞。あなたはどうするの?」
「私はメカ丸を助けたい」
せっかくメカ丸の本人に会えたのに……こんなお別れなんて認めたくない。
真依にそう答え、折れた刀を見つめた。得物がなければ戦えない。最初にやるべきは刀の調達だ。
「三輪。それは……」
歌姫が心配そうに口を開いたところへ、「邪魔するぜ」と日下部が入って来た。
「三輪。刀 折れたろ。これ使え」
「日下部さん……」
兄弟子から刀を受け取った三輪は、「ありがとうございます」とその刀を抱きしめる。
「んで、話があるから俺と来てくんねぇか?」
目を丸くすると、日下部が身を屈めて「行くんだろ?」と耳打ちしてきた。
バッと見上げると、彼はポンポンと三輪の肩を叩く。
「あー……ちょっと話 長くなるかもしれねぇな。いや、ちょっとじゃねぇか。ものすごーく長くなるかもしれねぇから、ここはひとまず解散ってことでいいか?」
気だるげな視線を向けられた歌姫がジッと何かを探るように見つめ返す。そして、日下部の真意に気づいたのか否か。彼女は深く頭を下げた。
「よろしくお願いします」
頭を下げた歌姫に、日下部はバツが悪そうに頭を掻く。
「……何をお願いされてるんだろうな」
三輪はもらった刀を腰に差し、すっとぼける日下部の後を追った。
* * *