夢幻泡影②【呪術廻戦(死滅回游〜)/伏黒 恵オチ】
第9章 そして始まるアンシオーソ【結界/東京第1結界】
「……ついて来ないで」
「オレは芸人だが大人でもある。いたいけな少女を一人にしておくわけには いかんだろう」
「わたしを舐めてるの?」
「いや、舐めてはいない。さすがにそんなことをしたら犯罪だ」
「あなたね……!」
そういう意味で言っていない。それは もちろん、髙羽も分かっている。おそらく、ボケたつもりなのだろう。
まずい。またペースに乗せられる。
グッと強い意志を持って睨むと、彼は力強い笑みを浮かべた。
「オレは自分の力のことは まだよく分かってないが、キミの助けにはなれるはずだ」
「いらない」
「オレ、暴力系のお笑いは肯定派だけど、痛いだけの暴力はNGだからね」
「わたしの話 聞いてる?」
・
・
・
「分かった! キミが何を為したいのかは知らないが、話したくないことは無理に聞かない! それでもオレは、キミの使命に協力する! お笑いも使命も、全力でやることに意味があーる‼」
「うるさい。わたしがやってるのは全部 私情。そんな大層な志なんてない。でも……」
人を殺すのは津美紀を助けるため――なんて、とても言えない。
津美紀を助けたいのも、そのために人を殺すのも自分のため。
それを『使命』だ なんだと大袈裟に言われても困る、が――……。
「だからって それをお笑いと並べられるのは不愉快」
「別に揶揄ってるわけじゃないぞ。オレにとって人を笑わせることは、崇高な使命だ」
「そんなの知らない。あと、ついて来ないでって言ったはず」
隣を歩く髙羽に詞織は思わず眉を寄せる。しかも詞織の右側にいるから、全裸で歩いているようにしか見えず、それも不快だった。
「せめて十歩 離れて歩いてくれる? 仲間だと思われたくない」
「ショッキーングッッ!」
話を聞いてくれない髙羽に これ以上 何を言っても体力と精神力の無駄だ。
「ところで、どこ向かってるの?」
「知らない」
色々と諦めながら、詞織はとりあえず先へ進むことにした。
* * *