夢幻泡影②【呪術廻戦(死滅回游〜)/伏黒 恵オチ】
第9章 そして始まるアンシオーソ【結界/東京第1結界】
『あたしが代わりにやりましょうか? その日車って術師を頼らなくても、あたしが やれば100点なんてあっという間よ』
「いらない。津美紀を助けたいのは わたし。わたしは自分の力で、津美紀を助ける」
詩音の力を借りれば早いのは分かっている。それでも、詩音がいなければ何もできない自分でいたくない。
まだ詩音に頼らなければ切り抜けられない状況もあるが、いつまでも それではいられない。
自分は自分の実力でこの場所に立っているのだと信じたかった。
――それに、詩音を逃げ道にしたくない。
『……つまらないわね。別にいいのよ。あたしが いないと生きていけなくなったって』
拗ねたような詩音の言葉を無視して何となく足を進めると、人影が見えた。気配に気づいて相手も振り返る――そして、詞織はその姿に固まった。
縦で半分に割り、片側はヒーローのようなデザインの青いタイツで、もう片方は裸の男だ。
「おや、お嬢ちゃん。こんなところで どうしたんだい?」
男の言葉が頭に入ってこない。
頭を振り、鈍る思考を取り戻した詞織は剣を抜き、切っ先を男に向けた。敵意があると分かったのだろう。男も身構える。
この感じ……巻き込まれた非術師ではない。
おそらく泳者――術師だろう。