第2章 ぎこちなく響くアン・フェール【禪院家/狩人】
「はいはい。あたしの前で怪我人を増やすな」
そう言いながら、家入が不自然に身体を強張らせた垂水の右腕を掴んだ。
「凍傷だな。氷の術式を使う呪詛師でもいたか?」
「東堂は?」
「無理だ。あれは【反転術式】の範疇を超えてるし、現代医学でも治せない。治せるとしたら星良だが……」
「命の危険がないと治せないって?」
「釘崎の治療で呪力を使い切って、今は動けない」
左腕の先を失った東堂を思い出す。彼の術式は両手を打ち鳴らすことが発動条件だから、元の状態に戻らなければ、今後 術式の行使は絶望的だろう。
家入の話に、垂水は「あっそ」と聞いた割に興味なさそうに返し、グッと突き放すようにメカ丸を解放した。
「おい、メカ丸。とりあえず、コレが治ったら殴るから。覚悟しとけ」
「……すまなかった……」
ギュッと震える拳を握り、メカ丸が頭を下げる。そんなメカ丸の拳に触れ、三輪は微笑みかけた。
そこへ、ザワザワと外がざわつく。
「ちょっと、アンタたち! 何なの⁉」
歌姫の厳しい声に、三輪たちは救護室の外へ出る。そこでは、黒いスーツの男たちが夜蛾を連行して行くところだった。雰囲気からして、補助監督ではない。
「歌姫先生、いったい何の騒ぎ?」
真依の問いに、歌姫が険しい表情で眉を寄せる。