夢幻泡影②【呪術廻戦(死滅回游〜)/伏黒 恵オチ】
第8章 覚悟が回すスターホイール【熱~東京第一結界】
せっかく、骨のある若い駒が手に入ると思ったのに、高専から派遣された術師だった。
人の術式にいちいちケチをつける連中と話すことなど何もない。殴り飛ばして とっとと追い出す。
頭に血が昇り、衝動のままに、そして冷静に、秤は虎杖を殴り飛ばした。扉ごと屋上へ吹き飛ばされた虎杖を追いかけ、秤は上着を脱ぐ。
「ユージ!」
駆けつけようとする女を、虎杖が「来るな!」と怒鳴りつけた。
サッと軽く虎杖が声をかけた方を確認する。女は綺羅羅が夕方に会ったと言っていたヤツだろう。それに、虎杖と来ていたウニ頭。さらに パンダ。
綺羅羅がTEL番で掛けてきたときは何事かと思ったが、屋上で三人に遭遇し、綺羅羅はカラクリに気づいたのだろう。
「詞織、伏黒、パンダ先輩――手ェ出すなよ」
「ナメるじゃねぇか」
拳を叩きつけるように、虎杖の顔面にめり込ませる。
「やぁ……!」
「モロッ……!」
女の悲鳴とウニ頭の声が耳に届くのと同時に、秤も眉を寄せた。
――ノーガード⁉︎
先ほどまで避けていただろう? 動きが見えなかったわけではないはずだ。試合で見た虎杖の身体能力を考えても、モロに食らうはずがない。
コイツ、避ける気がなかったのか⁉︎
吹き飛ばされた虎杖が、地面に手をつき、素早く身を起こす。
顔面は腫れて歪み、鼻からは大量の鼻血を噴いている。それなのに、目だけは強い意志を持ってこちらを見据えていた。
「イカれてんな」
何か聞いて欲しいことがあると言っていたことを思い出す。そのために ここまで来たのだろう。
何が虎杖をここまでつき動かすのか。