夢幻泡影②【呪術廻戦(死滅回游〜)/伏黒 恵オチ】
第7章 彼が求めるフリオーソ【潜入/熱/きらきら星/部品】
「――【この先ずっと 一緒にいられると思ってた。夜は明けない 君を失った世界の中で】……」
――【繰り返し 何回も 何度でも 叫んでる約束】
――【君といる時間は一瞬で 永遠じゃないと 分かっていたはずでしょ?】
「【霞む月夜に溶けてしまいそう……胸が苦しい。君がいなくて震えているの……抱きしめに来て】」
――【明日が見えない……】
周囲の気配が遠くなっていく。歌に引っ張られるように、漠然とした寂しさが募って、ふるりと本当に震えた。
大丈夫。歌の通りに自分が独りぼっちでないのは分かっている。隣に伏黒や虎杖がいなくても、自分には詩音がいる。寂しくなんてない。
――『ふふ。寂しがりな あなたも愛おしいわ。今は あたしが独占できるのね。いくらでも愛してあげる』
心の奥底で紅い瞳が細められ、喜びに声が滲んでいる。
――ありがとう、詩音。
けれど、ある程度 歌に気持ちを寄せていないと、術式が維持できない。
世界から切り離された孤独の歌に、スゥ…と無理やり感情を沈める。
詞織の存在を認識できなくなったのか、すぐ近くをすれ違っても、間に割って入っても、誰も気に留めない。
詞織は歌を口ずさみながら人波を少し離れたところで歌を途切れさせ、風の効果のある和歌で上空にふわりと飛び上がった。剥き出しになっている天井の鉄パイプに腰を下ろし、柱の陰に身を潜め、認識阻害の歌を再開する。
認識阻害は詞織自身に掛かっているが、声は周りに聞こえてしまう。しかし、歌い続けなければ効果も続かない。そのため、不審に思われないよう 観客たちと距離を取ったのだ。