夢幻泡影②【呪術廻戦(死滅回游〜)/伏黒 恵オチ】
第7章 彼が求めるフリオーソ【潜入/熱/きらきら星/部品】
「あとでな」
フードを深く被った伏黒が、会場に入っていく人波に紛れて行く。不意に周りの視線を躱し、壁に揺れる人影に溶けるようにして消えた。
事前にバイブレーションに切り替え、連絡はスマホで行うことになっているが、よほどのことがない限り――それこそ、潜入続行不可という判断をする以外では連絡しない。
イレギュラーとして、虎杖が秤に接触できることが確定した場合は、その段階で潜入終了。
「わたしも行かないと」
駐車場の壁に背を預け、伏黒のくれたキャップを目深に被って顔を隠した。そして、頭の中にある歌をいくつか反芻し、書き換えやすいものを探す。
「……隠す……霞む……見えない……消える……」
【巡り合いて】の和歌が認識阻害の効果を持っているが、持続時間が短いため潜入中 効果を維持できない。
歌の改変自体はそこまで難しくなく、どれだけ既存の歌と内容がかけ離れていても、それを自分の中に落とし込めさえすれば効果は発揮する。
詞織の術式に拡張術式というものは存在しないが、この歌の改変――アレンジがそれに該当するだろう。
ただ、歌を改変するのはいいが、既存のメロディーにリズムが合わなければ術式を発動することができない。
ブツブツと口の中や頭の中で歌をうたう。やがて、自分の中に歌の内容を落とし込み、改変した歌詞を頭の中でメロディーに乗せる。これなら問題なさそうだ。
よし、と小さく呟き、伏黒に続いて詞織も人混みの中に足を踏み入れる。小さく唇を動かし、微かな声で歌を紡いだ。