【地獄楽】✼••極楽へ至らぬ者たち••✼【R指定】
第9章 ✼••┈••✼夫を娶る✼••┈••✼
「いや…なんでも無い…。」
士遠は疲れたように額に手を当てて答えた。
罪人…いや、人間でももう少し悪意はある。
側に朱槿でさえ、苛立ちも悪意も感じた。
孤蘭が嘘を付いていないこと位、士遠は分かっていた。
だからこそ困惑しているのだ。
『子種が欲しい。』
彼女の願いはたったそれだけだ。
その相手に情慕の気持ちも恋慕の気持ちも無かった。
物語の天女のような女だった。
実際に天女を見たら、こんな気持ちになるのだろうと士遠は思った。
人間の感情には疎く、その綺麗な姿で人を惑わすのだろう。
士遠は、胸元にある符をどうするか決めかねていたが、今は持っておくことにした。
もし次に会うことがあったら。
自分がどんな言葉を交わすのか、想像すら出来ないのに。
一方孤蘭は、姿は消してもしばらく二人のことを見ていた。
申し出を断られた理由が分からなかったが、孤蘭は止まることが出来ない。
すぐに他の氣を辿るとまた歪な氣を感じた。
その方向に向かって、夜の空をフワリと飛んだ。