Tell My World 【ヒロアカ 爆豪勝己】
第3章 未完の初恋、ログイン不可の心
「……わかった。でも、会うのは……もう少しだけ、考えさせてほしい」
は震える声でそう告げた。
緑谷はそれ以上無理強いはせず優しく頷いた。
「わかった。……でも、何かあったらすぐ僕に連絡して。かっちゃんには、君が承諾するまで絶対に正体は明かさないって約束するから」
二人は連絡先を交換し、静かに入り江で別れた。
『ZERO WORLD』内の、彼女だけが知るプライベートなホームルーム。
部屋の床に座り込み、は手元にある「手紙の束」を見つめていた。
緑谷から聞いた八年前の出来事と、あの約束の日からの出来事。
(……爆豪くん、……バカだよ。本当に……)
彼女は震える指で操作パネルを開き、ずっと拒絶していた彼のブロックを解除した。
そして、今の自分にできる精一杯の言葉を、短いメッセージに託して送信した。
一方、現実の病院。
「……、ほら。約束通り持ってきたよ」
緑谷はデバイスを爆豪のベッド脇に置いた。
リカバリーガールの治癒のおかげで顔色は幾分マシになったものの、依然として全身包帯だらけの重病人だ。
「……遅ぇんだよ、クソデク。死ね」
爆豪は毒づきながらも、その瞳には隠しきれない焦燥と期待が宿っていた。
「いい?かっちゃん。絶対安静だよ。少しでもバイタルが乱れたら、強制的にログアウトさせるからね!」
緑谷の制止を聞くよりも早く爆豪はデバイスを装着し、意識を仮想世界へと沈めた。
「……っ、……あいつ、来てるはずだ……!」
光の奔流の中、爆豪の意識が入り江へと加速する。
心配でたまらない緑谷も、すぐさま自分のデバイスを手に取り、幼馴染の後を追うようにダイブした。
偽物の海風が吹く、あの入り江へ。
再会の予感に震える爆豪の視界に、一通の「通知」が届いたのは、彼が砂浜に降り立つ直前のことだった。