Tell My World 【ヒロアカ 爆豪勝己】
第3章 未完の初恋、ログイン不可の心
「……あの日も、かっちゃんはずっと君を待ってたんだって……雨の中で、ずっと……。連絡手段がないからって、あの場所から一歩も動かずに…… その後も、リアルで会う約束をしたのに彼女が現れなくて、連絡手段も絶たれて、ずっとここで待ち続けてる、って……」
「……あの日も、ずっと待ってたんだ……」
緑谷の言葉が、彼女の胸に深く突き刺さる。
同じ「被害者」だったはずの緑谷は、今では爆豪の背中を支える最高の相棒(ヒーロー)として隣にいる。
それに比べて自分は、過去の影に怯えて、彼が差し出した手を振り払ってしまった。
「緑谷くん、私……彼に、酷いことをしたの」
「……かっちゃんは、そうは思ってないよ。君が事故にでも遭ったんじゃないかって……ずっと気にしてたんだ」
緑谷は悲しげに目を細め静かなトーンで続けた。
「ねぇ、ちゃん。かっちゃんともう一度、話をしてくれないかな。今度は、本当の君として」
その言葉に、彼女は応えることができなかった。
ただ、握りしめた拳を震わせ、静かに俯くことしかできなかった。
(会いたい……。あの手紙の続きを聞きたい。爆豪くんの、本当の体温に触れたい……)
『BLAST』として自分を愛してくれた彼を、心が叫ぶほどに求めている。
けれど、同時に、過去の記憶が鋭い爪を立てて彼女の足首を掴んで離さない。
(でも、会いたくない。……彼が見ているのは『エミリア』で、私じゃない。……本当の私を知ったら、彼はまた、あの時みたいに私を軽蔑するんじゃないの……?)
愛されたいと願う自分と、これ以上傷つくのを恐れて殻に閉じこもる自分。
二つの心が鏡合わせのように対立し、彼女を動けなくさせていた。
「……怖いんだ、緑谷くん。……現実(リアル)で彼に会って、もし、またあんな風に笑われたら……私、今度こそ本当に壊れちゃう」
震える手で自身の肩を抱きしめる彼女の姿は、煌びやかな歌姫のミラージュを纏っていても、あの頃の、教室の隅で震えていた少女のままだった。