Tell My World 【ヒロアカ 爆豪勝己】
第3章 未完の初恋、ログイン不可の心
潮騒の音が響く静かな入り江に、光の粒子が舞った。
そこに現れたのは、誰もが知るあの『歌姫』の姿。
『ZERO WORLD』の至宝とも呼ばれる、儚くも美しいそのミラージュに、緑谷は改めて息を呑んだ。
「……本当に、ちゃんがエミリア……なんだね」
現れた彼女は、少しだけ緑谷を睨むように唇を噛んでいた。
かつて同じ「無個性」として痛みを分け合った、あの控えめな少女の面影を宿しながら、まとっているのは世界を魅了するスターの輝き。
そのギャップに、緑谷はめまいを覚えた。
「……卑怯だよ、緑谷くん。あんな言い方、ないじゃない」
透き通るような、けれどどこか寂しげな声。
彼女がそう呟くと、緑谷は申し訳なさに肩をすくめた。
「ごめん。でも……こうでもしないと、君はもう二度と僕らの前に現れないと思ったから。……それに、かっちゃんがあまりにボロボロだったからさ」
「……彼が、バラしたの?ここで会う 私が『エミリア』だってこと」
不安げな彼女の問いに、緑谷はゆっくりと首を振った。
「ううん、かっちゃんからは聞いてないよ……僕が、勝手に繋ぎ合わせただけなんだ……この入江で、かっちゃんがある女性と会ってるって。その他にも色々……昨日、切島くん……かっちゃんと仲のいい共通の友人から話しを聞いて…」
「………」
「……まさか、その相手が、この世界の歌姫のエミリアだとは驚いたけれども……」
「……ねえ、緑谷くん」
が、震える声で問いかけた。
「どうしてあの花束を見ただけで私だってわかったの? ……あんなにボロボロで、意識も朦朧としてたはずなのに」
緑谷は病室で見た爆豪の執念を思い出し、静かに答えた。
「ラッピングの配色だよ。白い包装紙に、青いリボン。……かっちゃんは、あの日君と約束したデートのコーデを……その色を忘れてなかったんだ」
その答えに、エミリアとしての光り輝く姿が、一瞬だけ歪んだ。
「……っ、そんなの……」
「ただの偶然じゃないって、確信してた。……君が『誰』かを知るよりも先に、かっちゃんの魂は、君が来てくれたことを理解してたんだと思うよ」