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Tell My World 【ヒロアカ 爆豪勝己】

第3章 未完の初恋、ログイン不可の心


「……落ち着いて!まずは安静にするのが先決だよ!先生を呼んでくるから、暴れないでよ!」


今にもすぐにダイブしそうな爆豪にそう吐き捨て、緑谷は逃げるように病室を後にした。
背中越しに「あァ!? デバイス持ってこいっつってんだろクソデク!」という怒声が飛んでくるが、今はそれどころではない。


廊下の角を曲がり、緑谷は震える手で自身の顔を覆った。
爆豪は、あのアバターの中身があの中学の同級生の彼女だとは知らない。

だが、のあの悲痛な表情は爆豪が「かつての自分たち」を蔑んでいたあの頃の記憶と、今の想いとの間で引き裂かれている証拠だ。


「……このままじゃ、ダメだ」


緑谷は決意を固め、ナースステーションへ向かう足を速めた。
医師への報告を済ませ、彼は病院のラウンジの隅で、一人静かにダイブした。




潮騒が響く、いつもの入り江。
そこに、かつて祭典でチケットを譲ってくれた『Unknown』へと、Verdeとして一本のメッセージを送る。


『ちゃん。……いや、歌姫のエミリアさん。さっきは、何も言えなくてごめん』


文字を打ち込む指が、迷いと使命感で震える。


『かっちゃんが、さっき目を覚ましたんだ。……君が置いていった花束を見て、確信してた。……でも、君が「誰」なのかまでは、まだ気づいてない。……気づいてないんだよ、かっちゃんは……!』


緑谷は、かつて彼女と共有していた「無個性」としての痛み、そして今、ヒーローとして隣に立つ爆豪への友情を秤にかけ、非情な一文を付け加えた。


『今からあの入江で待ってる。……もし、来てくれないなら……。明日、かっちゃんに全部話す。……君の本当の名前も。……あの時の、同級生のちゃんだってことも』


それは、かつての友人に対して使うには、あまりに乱暴な「脅し」だった。
けれど、こうでもしなければ彼女はこのまま消えてしまう。
そして爆豪は、真実を知らぬまま「思い出」の中に殺される。



『……お願い。一度だけ、ちゃんと話し合わせてほしい……僕は、君のことも、かっちゃんのことも……これ以上、傷ついてほしくないんだ』



メッセージを送信し、緑谷は仮想の砂浜に深く腰を下ろした。
遠くで寄せては返す波の音が、カウントダウンのように静かに、けれど確実に鳴り響いていた



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