Tell My World 【ヒロアカ 爆豪勝己】
第3章 未完の初恋、ログイン不可の心
「……おいデク!! さっきから何黙りこくってんだ!! このラッピングは間違いねぇ、あいつが今日のために選んだ色だ……! どこに行った!!」
「あ、う……うあああああ!!(どういうこと!? 中学の友達があの歌姫!? )」
混乱のあまり、緑谷は両手で頭を抱えて叫びそうになった。
爆豪が愛し、現実での邂逅を待ち望んでいた「運命の女」が、実はあの「歌姫」で、自分たちがかつて共に過ごした「あの少女」だった。
しかも爆豪は、そのことにまだ気づいていない。
(……かっちゃんは、あのアバターの中身がちゃんだって知らないんだ。だから、あんなに嬉しそうに……。でも、ちゃんはかっちゃんの正体に気づいて、あんなに絶望した顔で……)
爆豪は、彼女が自分を心配して来てくれたことに歓喜し、希望を見出している。
けれど彼女は、自分をかつて壊した相手が、自分を愛してくれた「BLAST」だったという事実を知って、今この瞬間も打ちのめされているのだ。
「……おい、なんでそんなツラしてんだよ。あいつは……俺を、見捨ててなかったんだろ……?」
花束を抱く爆豪の瞳に、ほんの一筋、年相応の純粋な「光」が灯る。
それを見てしまった緑谷は、今更「彼女は君を拒絶して逃げたんだ」とも、「彼女はあの中学の時のあの子だ」とも、口が裂けても言えなかった。
「……そうだね、かっちゃん。……その人は、本当に君のこと、心配してたよ。……でも、すぐ行っちゃったんだ」
緑谷の嘘は、親友としての精一杯の慈悲だった。
けれど、かつての「無個性仲間」である彼女が抱えたあまりにも重い秘密と、爆豪の真っ直ぐすぎる執着。
その二つが正面衝突する未来を予感して、緑谷はただ冷や汗を流すことしかできなかった。