Tell My World 【ヒロアカ 爆豪勝己】
第3章 未完の初恋、ログイン不可の心
「あ、これ。……さっき、お見舞いでもらったんだ。君の知り合いだって人が届けてくれて……」
その瞬間、爆豪の動きが止まった。
緑谷が手渡した鮮やかなオレンジの二本のガーベラ。
それを包む、清潔感のある白の包装紙と、鮮やかな青のリボン。
それを見た爆豪の瞳が、これ以上ないほど大きく見開かれる。
「……この、ラッピング……」
「え? かっちゃん、どうかしたの?」
爆豪は震える手でその花を奪い取るように掴むと、狂おしいほどの熱量で緑谷を睨みつけた。
「……これを置いた奴は、今どこにいる!!」
「えっ、ええ!? だから、知り合いの人が置いていっただけで……」
「嘘ついてんじゃねぇぞデク!! この白い包み紙……青いリボン……あの日、あいつが着てくるって言ったデートのコーデと同じ配色だ……! これを置いたのは……エミリアなんだな!? あいつが、ここに来てたんだな!?」
「……え、エミリア……って、…あの、歌姫の!?」
緑谷の思考回路は、完全にキャパシティを超えて焼き切れた。
目の前で包帯だらけのまま花束を握りしめる爆豪と、さっき廊下で肩を震わせていた、かつての「無個性の同窓生」の姿。
そして、今その口から出た、あまりにも有名すぎる歌姫の名前。
(待って、かっちゃん……落ち着いて。頭が追いつかないよ……!)
緑谷にとって、エミリアは憧れの存在だ。
爆豪に誘われて、あるいは一人で、何度も彼女のライブへ足を運び、その圧倒的な歌声に心を震わせてきた。
一方で、さっき廊下で再会したは、中学時代に共に爆豪から虐げられ、傷を分かち合った大切な友人だ。
(かっちゃんがずっと狂ったように探していた『Unknown』が……あの歌姫のエミリア……? でも、この花を置いていったのは、ちゃんだ……。……え!? つまり、ちゃんが、あの『エミリア』なの……!?)
何度もステージで輝く姿を見てきたあのスターと、地味で内気だったかつての友人が、どうしても脳内で一致しない。
爆豪を拒絶した彼女の姿が、きらびやかな仮想世界の歌姫のイメージを激しく掻き乱す。