Tell My World 【ヒロアカ 爆豪勝己】
第3章 未完の初恋、ログイン不可の心
緑谷はベンチに置かれた花と、目の前のパーカー姿の少女を交互に見た。
彼にとって彼女は、中学卒業以来、行方も知れなかった「かつての親友」だ。
一方、ダイブ中に必死なメッセージを送ってきた『Unknown』は、爆豪が魂を削るようにして探していた「誰か」
その二つの存在が、緑谷の頭の中でどうしても結びつかない。
「ねぇ、ちゃん。君は、かっちゃんと……その、どういう繋がりがあるの? ずっと会ってなかったんじゃ……」
「……っ、……ただの、同級生よ」
は、溢れ出しそうな感情を無理やり押し殺し、パーカーのフードを深く被り直した。
同じ無個性として手を取り合っていたはずの緑谷は、今では爆豪の背中を支える最高の相棒(ヒーロー)として隣にいる。
それに比べて自分は、姿を偽らなければ彼に近づくことすらできなかった。
「ニュースを見て……あまりに酷い怪我だったから、放っておけなくて。……それだけ。だから、今のことは忘れて、……私が来たことは誰にも言わないで」
「え、でも……! …それにメッセージの主だって……」
「……ごめんなさい。もう、行かなきゃ」
混乱する緑谷の言葉を遮るように、彼女は短く告げた。
これ以上ここにいれば、自分が「歌姫」であることも、ZERO WORLDでの歪な関係も、すべてが暴かれてしまう。
「待って、ちゃん! せめて連絡先を……!」
背後からかかる、かつての親友の切実な声を振り切り、彼女は一度も振り返ることなく、白い廊下を駆け抜けた。
残された緑谷は、ポツンと置かれた花束を見つめたまま、立ち尽くすしかなかった。
かっちゃんが命懸けで探していた「誰か」と、今この場に現れた「かつての無個性の友達」
あまりにも不可解な再会に、彼はただ、ICUの扉を見つめていた。
運命の歯車が、病院の静かな廊下で再び大きく回り始めようとしていたーー。