Tell My World 【ヒロアカ 爆豪勝己】
第1章 ようこそ『ZERO WORLD』へ
広場を包んでいた夜の帳が、鮮やかな「音」の色に塗り替えられた。
ステージの中央で、エミリアがしなやかに指先を空へ遊ばせる。
すると、彼女の動きに呼応するように、足元から巨大な水蓮の花がクリスタルの輝きを放って咲き誇り、彼女を天空へと押し上げた。
「――響け」
彼女が第一声を放った刹那、空中に無数の銀色の魚たちが現れ、光の尾を引いて観客たちの頭上を泳ぎ回り始めた。
エフェクトすら出せないはずのこの世界で、それは彼女の「歌声の波形」そのものが作り出した、魂の視覚化だった。
降り注ぐのは、雪のように柔らかい光の欠片。
爆豪はその一つを掌に受けようとして――それが熱を持たないはずの情報体なのに、思わず指先を震わせた。
重力から解き放たれたエミリアは星屑を蹴りながら宙を舞い、光の旋律を振り撒いていく。
「…………っ」
爆豪は、瞬きすることさえ忘れていた。
今この瞬間に響く彼女の震えるような高音が、彼の凍りついた部分を容赦なく溶かしていく。
最後のロングトーンが夜空に溶け込み、世界が静寂に戻ったとき。
爆豪の目の前には、ただ真っ白な余韻と、これまでに感じたことのない胸の疼きだけが残っていた。
「なんだ、これ……。ただの歌じゃねぇぞ……」
隣で上鳴が何かを喚いているが、もう耳には入らない。
爆豪は魂を削るように歌い舞うエミリアの姿に、射抜かれたように釘付けになっていたのだったーー。
「ーーみんな、今日もライブ聞いてくれてありがとう。 また次のライブで会いましょう」
静寂が戻ったステージの上、光の粒子となって消えゆくエミリアが、一瞬だけこちらを向いた気がした。
「……っ」
喉の奥が熱い。
何かに当てられたような感覚に爆豪はただ、立ち尽くした。