Tell My World 【ヒロアカ 爆豪勝己】
第1章 ようこそ『ZERO WORLD』へ
「おい、BLAST! マジでヤバかっただろ!? エミリアのライブ!……、 おーい、生きてるかー?」
隣で上鳴(ピカキチ)が、現実と変わらないテンションで肩を叩いてくる。
いつもの爆豪なら「触んじゃねぇ、クソが」と怒鳴り散らしているところだ。
「……あ?」
「あ? じゃないよ! なあ、あんな歌、現実のどこ探したっていねーだろ? お前があんなに固まってんの初めて見たぜ」
「…………」
言葉が出てこない。
脳裏にはまだ、彼女が最後に残したあの視線が焼き付いている。
「……った、うるせぇ」
「え、何? なんて?」
「うっせぇっつったんだよ! ……あんなもん、ただのデータの塊だろーが。一回見りゃ十分だ」
そう吐き捨てて背を向けたが、足取りはどこか落ち着かない。
「なんだよ、ツンデレかよー! 次のライブも絶対来いよな!」
上鳴の声を聞き流しながら、爆豪は自分の右手を強く握りしめた。
火花一つ出ないはずの掌が、あの歌声のせいで今も嫌になるほど熱いままだった。
「おい、BLAST!!いつまで突っ立ってんだ! せっかくの初ダイブだ!街、回ろうぜ!」
上鳴の能天気な声に引き戻され、爆豪は未だに残る喉の奥の熱を無理やり飲み込んだ。
「……勝手についてくんなっつったろ、ピカキチ」
「 ほら、あっち行こうぜ。こっから先は『シルヴァ・アルフレイム』エルフの森エリア。マジで空気が美味いんだから!」
上鳴に促されるまま歩き出すと、街並みは一瞬で姿を変えた。
夜のネオンが消え、視界を埋め尽くしたのは発光する巨木と、淡い光を放つ花々。
鼻をくすぐるのは瑞々しくも清涼な香りだ。
「……あ? 匂いまでしてやがる」
「だろ? 五感は全部リンクしてんだ。あ、これ食ってみろよ。この屋台の串焼き、このエリアの名物!」
上鳴が差し出してきた、見たこともない紫色の果実が刺さった串を、爆豪は半信半疑で口に運ぶ。