Tell My World 【ヒロアカ 爆豪勝己】
第3章 未完の初恋、ログイン不可の心
『怒ってねぇ。ただ、何かあったんじゃねぇかって、それだけが心配だ』
二通目、三通目……。
彼女は取り憑かれたように手紙を読み進めた。
『事故にでも遭ったのか? ヴィランか? もし無事なら、一言だけでいいから返せ。俺はここにいる』
『責めたりしねぇから。……お前がいないと、飯も不味くて仕方ねぇんだわ』
そこには、彼女が知る「爆豪勝己」の傲慢さは微塵もなかった。
あるのは、ただ一途に、音信不通になった「愛する女」を案じ、自分の身を削るようにして待ち続ける一人の男の切実な祈りだけだった。
「……っ、……なんで……」
自分を虐めていた、あのプライドの高い彼が。
裏切られたはずの自分を、一言も責めずに、ただ「無事であれ」と願っていた。
日付を見れば、彼はあの日から毎日、自分の任務の合間を縫ってこの入り江に通い詰め、手紙を置き続けていたことが分かる。
最後の手紙。
日付は、彼が倒れる直前のものだった。
『明日も待ってる。お前が来るまで、俺はずっとここにいる』
「……あ、……あぁ……っ!!」
手紙の束を抱きしめたまま、はその場に泣き崩れた。
自分は過去に縛られ、彼から逃げ出したのに。
彼は、名前も正体も知らないはずの自分を、これほどまでに信じて、ボロボロになりながらも待っていてくれた。
この手紙を置いていたから、彼は寝不足で、集中力を欠いて、あんな大怪我を……。
「……ごめんなさい……っ、爆豪、くん…っ!!」
初めて呼んだ、彼の本当の名前。
ぐちゃぐちゃになった心で、彼女は手紙を握りしめ、自分を隠し続けていた仮想世界の空を見上げ、ただ激しく慟哭した。