• テキストサイズ

Tell My World 【ヒロアカ 爆豪勝己】

第3章 未完の初恋、ログイン不可の心


爆豪の時間はあの雨の公園で止まったままだった。
現実での連絡手段を持たない彼は、縋るような思いで毎夜、あの入り江へとダイブしていた。


メッセージ機能が拒絶されているのならと、彼はシステムの隙間を縫うように、砂浜に「置き手紙」のアイテムを残し始めた。



「……今日も、音沙汰なしかよ」



波打ち際に置かれた昨日の手紙は、開封された形跡もなく、虚しくデータの海風に揺れている。
爆豪はそれを消去し、また新しい手紙を置く。
書かれる内容は回を追うごとに短く、そして切実なものになっていった。




『……悪かった。俺が強引に誘ったせいか。頼むから、無事だってことだけ教えろ』


『何かあったなら言え。怒ってねぇから』


『体調悪いのか。飯は食ってんのか』




時間の許す限り彼は砂浜に座り込み、水平線を眺めていた。
かつて彼女が「綺麗だ」と言った偽物の海。
今の彼には、その青ささえもが胸を刺す棘に思えた。




(……あいつ、今どこで何してんだ。……泣いてねぇか。一人で震えてねぇか)



自分に拒絶の理由があるのだとしたら、それを聞き入れる覚悟はできていた。
嫌いになったと言われるなら、それでも構わない。
ただ、あの臆病で優しい彼女が、音もなく消えてしまったという「喪失」だけが爆豪の心をじわじわと摩耗させていく。



仕事の合間、数分でも時間が空けばデバイスを覗き込む。
「もしかしたら」という微かな希望に、プライドも矜持も、すべてを注ぎ込んでいた。



だが、返ってくるのはいつだって、無機質な波の音だけだった。




「……待つって言っただろ、クソが……。俺は、ずっとここにいんだよ……」



海を見つめる爆豪の背中は、現実のヒーローとしての逞しさを失い、迷子の子供のように小さく見えた。


この執着が、やがて彼を「一瞬の油断」という戦場の地獄へと引きずり込んでいくとも知らずにーー。






毎日、一通の手紙。
それは、届くことのない宛先へ向けた、爆豪勝己の悲鳴にも似た祈りだった。





/ 135ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp