Tell My World 【ヒロアカ 爆豪勝己】
第3章 未完の初恋、ログイン不可の心
ずぶ濡れのまま帰宅した爆豪は、震える指先でヒーロー専用の極秘ネットワークへアクセスした。
(事故か……。それともヴィランか。あいつ、どんくさそうだったから……)
最悪の事態を想定し、今日一日の都内の事故記録、事件発生状況、病院の搬送リストまで、権限を駆使して洗い出す。
だが、どれだけスクロールしてもあの公園の近くで「白いワンピースの女性」が巻き込まれたような事案は、どこにも見当たらなかった。
事件でも、事故でもない。
ならば、残る理由は一つ――「拒絶」だ。
「……クソがッ…」
冷え切った体を熱いシャワーで無理やり温めたが、胸の奥の氷は溶けない。
爆豪は髪も乾かさぬまま、逃げるようにデバイスを装着し、いつもの仮想世界へと意識を沈めた。
――『ZERO WORLD』へ、リンク開始。
いつもの夜の入り江。
ここに来れば、あいつがいる。
遅れた理由を、顔を真っ赤にして謝ってくるあいつが。
そう信じてメッセージを送ろうとした爆豪の手が、空中で凍りついた。
〈 メッセージを送信できません。相手の設定を確認してください 〉
「……は?」
二度、三度と虚空を叩く。
だが、無機質なシステムメッセージが非情に繰り返されるだけだった。
ブロックされているのか、あるいは連絡先を削除されたのか。
昨日まで、当たり前に熱い言葉を交わしていたはずの繋がりが、プツリと断たれていた。
困惑のまま情報の海を彷徨っていると、公式のシステムアナウンスが視界に飛び込んできた。
『【重要】歌姫・エミリア、ライブ活動の休止のお知らせ』
「……な……っ」
呼吸が止まった。
彼女の最後のログイン記録は、待ち合わせの1時間後。
爆豪が待っていたまさにその時間だ。
あいつは、あそこにいたのか。
それとも、どこか別の場所でログインし、自分との繋がりをすべて消去したのか。
「なんでだよ……。意味分かんねぇだろうがよ……っ!」