• テキストサイズ

Tell My World 【ヒロアカ 爆豪勝己】

第3章 未完の初恋、ログイン不可の心


「……え?」


喉の奥から、乾いた掠れ声が漏れた。
視界が歪む。
時計塔のベンチに座る「彼」の鋭い三白眼、逆立った髪、そしてファンを突き放す傲岸不遜な態度。
記憶の底に沈めていた、もっとも尖っていた頃の「爆豪勝己」の面影が、目の前のプロヒーローの姿と残酷なまでに重なった。



(嘘……。そんな、嘘でしょ……?)


『ZERO WORLD』で見せてくれた、不器用な優しさ。
照れ隠しの毒舌の中に宿っていた、あの温かな体温。
それを注いでくれていた相手が、かつて自分を「無個性」だと蔑み、絶望の淵に突き落とした中学時代の同級生の爆豪だなんて。



「……っ、あ……」


あの日、彼に言われた心無い言葉の数々が、今の自分を全否定するように脳裏に蘇る。
もし彼が、今の私の正体を知ったら?
あの「歌姫」の中身が、かつて自分が踏みにじった出来損ないの同級生だと知ったら、彼はどんな顔をするだろう。
嘲笑われるのか。
それとも、またゴミを見るような目で吐き捨てられるのか。



「いや……」


首を振る。
幸せに浮かれていた心は、一瞬にして冷酷な現実の底へと叩き落とされた。
会えるはずがない。
今の私を見て、「あいつだ」と気づかれることすら耐えられない。
爆豪はまだ、まとわりつくファンに苛立ちながら周囲を睨みつけている。



「……あ、……うぅ……っ」


溢れ出した涙が、白いワンピースの胸元に染みを作る。
は踵を返すと一度も振り返ることなく、人混みの中へと駆け出していく。


「ダイナマイト! 写真一枚だけでいいから!」

「っるせぇっつってんだろ! 散れ!!」


爆破音にも似た怒声が背中に届く。
それがかつて自分に向けられた怒号と同じトーンであることに、彼女はさらに強く唇を噛んだ。
楽しみにして選んだワンピースも、彼のために結んだ青いリボンも、今はただ自分を惨めにするだけの衣装に成り下がっていた。

現実(リアル)の世界は、やっぱり残酷だ。
0の世界でどれだけ愛を囁き合っても、過去という名の境界線は、決して消えはしない。




「……ごめん、なさい……」



人混みに紛れ、震える声で呟いた謝罪は空に溶けて消えた。




後方の時計塔の下のベンチでは。
男が、刻一刻と迫る待ち合わせの時間を、ただ一途に、期待と緊張を込めて待ち続けていたーー。




/ 135ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp