Tell My World 【ヒロアカ 爆豪勝己】
第2章 初恋は、0と1の境界線上で
「……おい、爆豪」
切島が声を潜め、爆豪にだけ聞こえるように身を乗り出した。
「お前……さっき車で言ってた『雲のソファーが好きなやつ』って……。デートで行った先って、まさか……」
「……っ、黙れっつってんだろ切島ァ!! ぶっ殺すぞ!!」
爆豪は顔を真っ赤にして、切島の口に無理やり唐揚げを突っ込んだ。
「むぐっ!? お、お前……マジかよ……! 相手、あの歌姫……」
「ちげぇっつってんだろ! 偶然だ、偶然!!」
必死に否定しながらも、爆豪の脳裏にはあの砂漠で隣にいた彼女の横顔と、一緒に食べたケーキの味が鮮明に蘇っていた。
心臓の鼓動が激しく打ち鳴らされる。
「かっちゃん? 本当に顔が赤いよ? 酔ってるわけじゃないよね?」
心配そうに覗き込む緑谷を「黙ってろデク!!」と怒鳴り散らしながら、衝動を必死に抑え込んでいた。
「恋といえば……爆豪もあっちでいい感じのやついるよな!」
上鳴の暴露に、個室の温度が一気に数度上がった。
これまで静かに飲んでいた女子たちも、獲物を見つけた猛獣のような目で身を乗り出してくる。
「えっ、ちょっと待って! 爆豪に浮いた話!?」
「信じらんない……あの戦闘狂が、ついに人間らしい感情を!?」
「るっせぇえええ!! 死ね! 上鳴、テメェ今すぐ爆破してやる!!」
爆豪が椅子を蹴り飛ばさんばかりの勢いで立ち上がるが、一度火がついた女子たちの好奇心は止まらない。
芦戸がキラキラした目で爆豪を指差した。
「え、どんな人!? ヒーロー? それとも一般の人? 現実でも会ってるの!?」
「……あ? 言うわけねぇだろ、クソが! そもそも『いい感じ』じゃねぇ、俺が勝手に……っ、……チッ!」
言いかけて口を噤んだ爆豪の様子に、一同が「おぉー!」と声を揃える。
「勝手に……何!? 追いかけてんの!? 意外! 超意外なんですけど!」
「爆豪をそこまでさせる相手って、どんな大物だよ……」
切島が横で「いやー、男気あふれるアプローチ中なんだよな」とニヤニヤしながらフォロー(追い打ち)を入れると、爆豪は真っ赤な顔で切島の首を締め上げた。