Tell My World 【ヒロアカ 爆豪勝己】
第2章 初恋は、0と1の境界線上で
「……お前ら、さっきから言っているその『ZERO WORLD』というのは、そんなに面白いのか。俺は、あまり通信ゲームの類には明るくないんだが」
「ゲームっていうか、もう一つの仮想現実って感じかな」
緑谷が丁寧に説明する。
「景色も綺麗だし、アバターを通して触れる感覚もすごくリアルなんだ。かっちゃんに誘われて僕も始めたんだけど、意外とみんなやってるんだよ」
「……爆豪が、誘った……?」
轟が意外そうに爆豪を見る。
爆豪は「……チッ、悪いかよ」と不機嫌そうに視線を逸らした。
「そうなんだよ轟! 今、ヒーローの間でも大流行中なんだぜ」
切島がスマホの画面を見せながら身を乗り出す。
「特にあそこで歌ってる『歌姫』、知ってるだろ? 最近じゃ現実のチャートでも一位独占してるあの――」
「エミリア、だろ」
耳に馴染んだ名前に、爆豪の指先がわずかにピクリと動いた。
「そうそう! その彼女さ、つい数日前に新曲出しただろ? あれ、ネットでもめちゃくちゃ話題になってんだぜ」
上鳴がスマホで音楽ニュースのサイトを開く。
「これまでの彼女の曲って、どこか孤独で、高嶺の花みたいな、突き放すようなカッコよさや切なさが売りだったじゃん? なのに今回の新曲……『初めての恋』がテーマなんだってよ」
「へぇ……。あのエミリアが、恋愛系の歌詞を書くなんて珍しいね」
緑谷が興味深そうに頷く。
「歌詞がまた切ねぇんだよ。『砂漠で見上げた空』とか、『溶けるような甘いケーキ』とかさ。実体験じゃねーの!? 誰か特定の相手がいんじゃねーの!? って、ファンが阿鼻叫喚してんだ」
その瞬間、助手席で爆豪の「こだわり」を聞いていた切島の動きが止まった。
(星降る砂漠……雲の味……。前に爆豪から聞いた話しにそんなんあったような……新車のふかふかシートの理由……)
切島は、隣で猛烈な勢いでウーロン茶を煽っている爆豪を凝視した。爆豪の耳元はの照明の下でもはっきりわかるほど真っ赤に染まっている。