Tell My World 【ヒロアカ 爆豪勝己】
第2章 初恋は、0と1の境界線上で
「へぇ、緑谷は会ったことあんのか! 羨ましいぜ」
切島が笑いながらシートを叩く。
「俺なんて、爆豪に誘われてダイブしても、もっぱらライブ会場で暴れるか、賑やかな酒場で飲むかだもんな。あ、でも先週のあのライブは最高だったな、爆豪!」
「……あァ。あの歌は、悪くなかった」
切島ともたまにダイブしては、男同士で派手に遊んでいる。
爆豪にとって、この仮想世界はもはや生活の一部であり、大切な仲間や「彼女」と繋がる不可欠な場所になっていた。
「にしてもよ、新車のシートまで彼女の好みにカスタマイズか……」
切島がしみじみと内装を見回す。
「爆豪、お前マジでその彼女を現実(リアル)のこの車に乗せる気満々じゃねぇか。男気あるな!」
「当たり前だ。あいつは……俺が選んだ女だ。いつまでもデータの光だけで満足してられるかよ」
爆豪のその言葉には、かつての刺々しさはなく、一人の男としての静かな決意が宿っていた。
「……かっちゃん、本気なんだね」
緑谷が嬉しそうに微笑む。
「……ふん。てめぇらこそ、会場に着いたら轟の野郎に余計なこと喋るんじゃねぇぞ。今日の主役はあいつなんだからな」
新車の滑らかな走りと共に、三人の会話は弾む。
いつかこのふかふかのシートに、愛おしい彼女が、現実の姿で座る日が来ることを確信しながら、爆豪は目的地へと車を走らせた。
賑やかな居酒屋の大部屋で、テーブルには大皿料理が並んでいるが、並んでいるグラスの中身はどれもソフトドリンクだった。
「……あーあ。No.2の祝いだってのに、結局全員ソフトドリンクかよ」
上鳴がジョッキのコーラを啜りながら笑う。
「仕方ないよね…いつ緊急招集かかるかわからないから……無意識にセーブしちゃうよ」
緑谷が応じると、隣の切島が笑って背中を叩いた。
「だからこそ、だよな! 現実(リアル)で飲めねぇ分、『ZERO WORLD』の酒場が繁盛するわけだ。あそこならどんだけ浴びても、ログアウトしちまえば頭はスッキリ、酔いも残らねぇしよ!」
「分かるわー! 俺も昨日の夜、爆豪とあそこのバーで結構いったもんな」
上鳴の言葉に、これまで黙っていた轟が不思議そうに顔を上げた。