Tell My World 【ヒロアカ 爆豪勝己】
第2章 初恋は、0と1の境界線上で
「……おい。次はこっちだ」
夜の国の最果て――『星降る砂漠』
見渡す限りの銀砂が月の光を弾き、天空には七色のカーテン、オーロラが揺らめいている。
「……綺麗。こんな景色……絶対に見られないと思っていました」
隣に立つエミリアが、吐息を漏らす。
爆豪はそんな彼女の横顔を、オーロラよりも熱い視線で見つめていた。
彼女の手を握り締めると、繋いだ指先から確かな幸福感が流れ込んでくる。
またある日は、『天空の城』の城下街の一つにあるの浮遊庭園で、雲をそのまま象ったような真っ白なケーキを前に、エミリアは少女のように瞳を輝かせていた。
「これ、本当に雲を食べてるみたいです! BLASTも食べてみてください、ほら!」
「……甘すぎんだろ。……」
彼女に差し出されたスプーンを、少し照れながらも口にする。
世間ではトップヒーローとして恐れられ、尊敬される『ダイナマイト』
けれどこの世界で、彼女と二人きりで過ごす時間だけは、ただの「爆豪勝己」という一人の男として、穏やかな笑みを浮かべることができた。
『深海のクリスタル洞窟』で幻想的な光に包まれ、『空中回廊』で夜景を見下ろす。
一つ、また一つと、彼女が望んでいた「初めて」を、爆豪は力強く、そして優しい思い出に塗り替えていった。
爆豪はただ、目の前で笑う彼女の存在を深く愛おしく思う。
「……次はどこへ行きたい」
「……BLASTと一緒なら、どこへでも」
重なる視線や交わされる言葉の端々に、あの日交わした口付けの熱がまだ残っている。
デートを重ねるたび、二人の絆はバーチャルという境界線を越え、切ないほどに深く、現実の心を縛り付けていったーー。